Pyrographilica

パイログラフィリカ

もう一度行きたい場所

お題「もう一度行きたい場所」

 

「もう一度行きたい場所」とは、簡単には行くことはできないが、今でも「また行きたい」と思える場所。つまり再訪したい旅行先のことだと思う。

そこは他人がどう思っているかは分からないが、自分にはとても価値があると感じている場所と言える。

その価値とは、息をのむような絶景かもしれないし、美味しい料理で出迎えてくれる店かもしれない。

私にとってまた行きたいと思える価値は、人や生き物と心がふれあった経験、思い出である。

でも時間が経っていれば、同じ人や生き物と再会できる可能性はそんなに高くない。

再訪すれば、あの温かい気持ちになった血流が、自分の中に再び蘇るんじゃないか、そんな期待が、再訪したい旅先として思い浮かぶのだろう。

 

 

友人と冬の北海道を訪れたその旅行では、初日と最終日だけ一緒に行動することになっていた。

慣れないスノーブーツでアイスバーンを歩き、私の足は初日で靴擦れを起こし、ほとんどホテルに引きこもっていた。

最終日前日、このまま旅行先でも引きこもりで終わりたくないと思い、午後遅くホテルからノーザンホースパークに向かう。

電車で空港まで行き、空港からシャトルバスに乗った。バスには他に乗客のいない時間だった。

園内にも他の客はいなかった。きっと訪れる時間が遅かったのだろう。

朝一番はサラブレッドが馬場を走るところが見られたり、ポニーのショーをやっているらしいかったが、陽が傾き始めた時間は馬たちが厩舎に戻り始める時間だ。

それでも馬房に戻った馬たちの目は、夕方の食事を心待ちにしていて、とても愛らしかった。

 

 

一通り園内を見終えて最終バスを待つ間、屋外は寒いのでポニーショーをするホールの椅子で待たせてもらうことにした。

そこへ、お姉さんが1頭のミニポニーを連れてやってきた。どうやらショーの練習を始めたらしく、ミニポニーはステージの柵内で背の低いハードルを何度も飛び越えてみせる。

サラブレッドの障害レースなら、「踏み切って~ジャンプ!」というやつであるが、ずんぐりしたミニポニーがやると、とてもかわいらしい。

ミニポニーの姿をカメラで20分くらい撮っただろうか。練習が終わったらしく、お姉さんとミニポニーは馬房に向かうのだろうと思った。

するとステージ前の私のところへきて、「せっかくだから、もうちょっと撮りませんか?」と言われ、ミニポニーの顔芸や、後ろ脚で立ち上がるミニポニーの姿を10分くらい撮らせてもらったのだった。

帰りのバスも運転手さんと私だけ。でも、良い思い出になる写真が撮れた気がして、車窓から雪景色を眺めながら、宿へ帰った。

 

 

お姉さんにしてみれば、ちょっとしたオマケというサービスで見せてくれただけで、私に声かけたこと、ミニポニーの芸を見せたたことは、覚えていないだろう。

でも私には、足のつらさと、他に客のいない園内の寂しさの中で、ホットココアを飲んだような温かさが今も残っている。

分かったような妄言を書くと、こういうちょっとした親切が、見ず知らずの人の心に響いて、北海道の魅力が高まっているんじゃないかとも思う。

自分も地元を訪れてくれる旅行者に、せめて親切な道案内や声かけができるようになりたい。