三重県立美術館で開催されている「テオ・ヤンセン展」を見てきたので、メモを残しておこうと思う。
どこかで見たような動きでありながら、多分どこでも見ていないような動き
昆虫のようでもありながら、ストランドビーストのような多関節多脚の生き物は、見たことが無かったと思う。
アートの世界で「見たことが無い」と感じてもらうために重要なのは、全く見たことが無いものを創るのではなく、既知のものに新規性を付けたすことであると聞いたことがある。
ストランドビーストの動きは見たことが無いと感じさせるが、しかしこの世で全く見たことが無い次元の動きではなかった。
存在の無意味さ
ストランドビーストは、人工生命としての背景(設定)がきちんと存在していることが、展示のタイトルや説明を読むと分かった。
独自な世界観なので、ちょっと筋を間違えるとチュウニ的なお話にも読めてしまうが、そこはお楽しみ要素だと思うので、気にしなかった。
ストランドビーストは作品としての金銭を生んでいるかもしれないが、テオ・ヤンセンは金儲けのためにストランドビーストをつくっているようには思えなかった。
ストランドビーストもまた、金儲けをしようとせず、ただ歩くことだけで、美しさと面白さで人の心を打つ存在であり、その存在こそがまさに芸術なのだと思った。
実際に見ること
ストランドビーストの歩く姿は、Youtubeでたくさん見られる。
美術館でのデモンストレーションは、私も動画を撮ったが、動画を撮りながらモニターごしにストランドビーストを見て満足していてはダメだなと感じた。
ふとモニターから目を離し、ストランドビーストの実物が目の前を歩く、動くというさまを見ていると、動画に撮れる面白さ以上のものが見えるし、感じられる気がした。
私の動画撮影の腕が未熟であることが大きいと思うが、記録を撮ることを優先しすぎず、自分の五感でしっかり受け取ることは、もうちょっと大事にしようと思った。
おしまいに
ストランドビーストは、現代アートの領域にあるのかもしれない。しかし、ストランドビーストはものすごく純度の高い芸術作品だと感じた。
今回の展示を見て、どういう影響を受けたことになるのかは、まだ全然分からないし、何かの役に立ったと思う芸術なんて、まやかしなのかもしれない。
でも、見たことの無いものを見られたという、いい経験になったのではないかと感じている。